LEV-1(Lunar Excursion Vehicle 1、レブワン)は宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の宇宙科学研究所、東京農工大学、中央大学が共同で開発した小型の月面プローブである。
2024年1月19日(UTC)、同じく月面プローブのLEV-2と共にSLIMから分離して月面に着陸し、自律的に月面を移動、LEV-2と月面ロボット同士で通信、LEV-1単独で地球にデータを送信することに成功した。
概要
LEV-1は月面で自律動作により探査を実施する小型プローブとして、LEV-2(SORA-Q)と共に月着陸実証機SLIMに格納・搭載され、2023年9月7日にH-IIAロケットで打ち上げられた。
計画
SLIMが月面へ着陸する直前、月面の高度1.8mでSLIM側の分離機構LEV-MによりLEV-2とともに放出される。LEV-1・LEV-2は独自の着陸機構を持たず約2.4m/sの速度で月面に衝突する。月面へ落下した後、LEV-1は月着陸後のSLIMの撮影などを試み、得たデータを地球へ送信する。また、LEV-2が収集したデータを受信して、地球へ送信する中継器も兼ねている。
運用
- 2024年1月19日(UTC)
- 15:19:20 - 電波の発信を開始
- 15:19:50頃 - SLIMから分離(高度約5m)
- 15:19:52頃 - 月面に着陸
- 15:20:20.20 - 内之浦局・臼田局が電波を受信(電波発出はその1.3秒前)
- 15:20:30 - 月面探査開始
- 17:10 - 海外のアマチュア無線家による信号受信を最後に通信途絶
運用結果
- S帯の電波を臼田宇宙空間観測所・内之浦宇宙空間観測所・DSNマドリード局で受信した
- UHFの電波をアマチュア無線家ら(和歌山大学、日本、ヨーロッパ)が受信した
- LEV-2が自律的に撮影したSLIMの画像1枚を中継して地球に向けて送信した。SLIMの予定外の着陸姿勢はテレメトリから予測されていたが、これを確認した形となった
- 受信データより、7回のホッピングと車輪回転が確認された
- 1回目のホッピングは機能開始から895秒経過時点
- LEV-2からLEV-1へ2回分の画像データが送信された
- 通信途絶前にはバッテリ電圧が低下し、搭載コンピュータの温度は70℃を超過していた
- 通信途絶後は太陽電池による発電・温度の低下により活動を再開する可能性があるとして、電波の受信体制を維持し月面待機中の扱いとした
- LEV-1単独で月面の撮影を予定していたが受信データから撮影データは確認できていない
記録等
- 世界初の跳躍による月面移動
- 世界初の完全自律探査(LEV-2と共に)
- 世界初の月面のロボット間通信(LEV-2と共に)
- 世界初の月面アマチュア無線局
搭載機器
移動機構
LEV-1は1軸の跳躍(ホッピング)機構と1軸の回転車輪を使用した特殊な移動形態で設計されている。車輪を回転させて跳躍可能な姿勢に復帰させ、跳躍用のバネをモーターで縮め、バネを解放した反動でホッピングパッドが月面を蹴り移動する。一般的な月面車が2軸以上の車輪の回転によって移動するのに対し、小型ローバに適した不整地移動手法の実証をミッションの一つとしている。
完全に自律的に動作し、ホッピングの方向は画像処理によって決定される。
通信機器
- 通信モジュール
- UHF(送受信、430MHz帯)
- S帯(送信)
- 寸法:60×40×25mm(運用時点で世界最小・最軽量の月面通信機)
- 質量:90g
- フィルムアンテナ(UHF)
- アンテナ(S帯)
LEV-2とはBluetoothによって通信する。
その他
- カメラ(フロント・リア)
- 電力系(10W程度)
- 太陽電池セル(8セル)
- バッテリー(6セル)
- 加速度センサ(2種)
- 10G以下
- 5000G以下
脚注
注釈
出典
外部リンク
- 小型月探査ローバ LEV (東京農工大学)


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